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2009年10月02日

インタビュー:空想生活=エレファントデザイン 西山浩平さん

2000年2月のインタビュー原稿を、古い古いPCのバックアップデータから復元できました。

今は「空想生活」としてはもちろん、「無印良品 モノづくりコミュニティー」の運営でも知られる、エレファントデザインの西山浩平さんを取材させていただいたときの、懐かしい原稿です。
西山さん、その後メールもご無沙汰させていただいておりますが、お元気でご活躍中ですか?
あのとき、こんな普遍的なサイトに着目し、インタビューさせていただいていた私自身を、ちょっと見なおしています。(笑)


エレガントでいて緻密なインターネットマーケッター
「空想家電」に見る『ユーザー・エージェント』ポリシー

最近特に脚光を浴びているのは、消費者主導型ECビジネスサイトであろう。アメリカでも『Accompany.com』のようにユーザーを多数集めることによってディスカウントを発生させたり、『ExpertCentral.com』のようにユーザー同士からのアドバイスを多数載せることでユーザーをショッピングに動員したりするなど、新たなビジネスチャンスを掘り起こすためにコミュニティを利用したビジネスモデルが多数ある。日本でもこの傾向が急激に現れ始めている。が、ユーザーの声収集のために積極的にインターネットを利用し、「マーケティング分析」という形で定量的に受け止め、「商品開発」という形で具体的に昇華させる力を持ったインターネット企業はまだほとんど存在しないのではないだろうか。
『空想家電』(http://www.coi.co.jp)の運営元であるエレファントデザイン株式会社は、その稀有な企業のひとつである。今までになかった商品提案を行い、ユーザーからの予約を集め、メーカーに対する価格交渉と生産交渉を代行し、できあがった商品を市場に乗せる。いわば『受注生産型ビジネスモデル』である。このサイトはまだ“知る人ぞ知る”といった存在に過ぎない。が、優雅なたたずまいのWebサイトの裏側では、実はハイ・パフォーマンスのマーケティングシステムと緻密なビジネスプランが牙を研いでいる。将来日本を担うインターネットビジネス企業となることを予感させるエレファントデザインをレポートする。

右欄:STATS
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エレファントデザイン株式会社
パートナー
西山浩平

年齢:29才 独身
趣味:オペラ鑑賞。「最近ゲルギエフオペラを見に行き感激しました」
休日:なし。気づいたら会社に来ている。「ウィンドウショッピングが唯一の気晴らしかも」


学生かたわら『かばん屋さん』としてマーケティングを実践

> 『空想家電』のWebサイトに存在するものは、従来の日本のWebサイトにはあまり見当たらなかったデザインとマーケティングの融合というものではないかと思います。特にそのデザインセンスについて、日本人にないテイストを感じさせます。西山さんご自身のバックグラウンドというものはどういったものなのですか?

西山:
実は私は『帰国子女』です。19歳になるまで商社に勤めていた父親の仕事の都合で、南米・コロンビアで青春時代を過ごしました。コロンビアという土地柄はどちらかというと世界の中心からは一歩取り残された風情のあるところで、ビジネスのほとんどは家内制手工業が中心です。そんな土地でのんびり過ごしながら、私自身は彫刻家を目指していて、アメリカのロードアイランドスクールオブデザイン大学への入学も決まっていました。ところがその直前、両親がやはり日本に帰って経済を学んで欲しい、と言い出しまして、半ば強制的に東京大学経済学部に入ることになりました。

> 芸術家肌の方にいきなり経済学部の気風はつらかったでしょう。

西山:
自分の中で創作意欲のようなものを拭い去ることができず、20歳の頃、大学生をやりながらオーダーメイドの『かばん屋さん』を始めました。まず半年間日本で数軒しかないかばん屋さんで作り方の修行をし、そこで知り合った仲間と独立しました。営業手法は完全に口コミによるものだけで、主な顧客は弁護士とお金持ちの主婦たちでした。弁護士の方たちはなぜか『六法全書』『カセットテープレコーダー』そして『弁当』を持ち歩きます。これらをきちんとセットできるかばんというものが既製品では存在しませんでした。また、彼らにいたって好まれるグレイ系・茶系のスーツに合う色身のかばんもあまり多くありませんでした。それを私達が作ることができる、ということが裁判所の中で徐々に広まり、着々とお客様を獲得できました。面白いことに、このような方たちは一度かばんを作ると必ず次に別のオーダーメイドの革製品を欲しがってくれます。例えば、「この前と同じ皮で財布を作ってくれ」というご注文や「同じ形のものを別の色の皮で作ってくれ」というご注文が来るわけです。不思議なもので、2度3度とお会いすると必ずその方の好みが把握できます。考えてみれば、この頃はお金をもらってマーケティングリサーチを行っていたようなものです。

> お聞きしていると実に順調にビジネスが伸びていたようにお見受けしますが。

西山:
ところがしばらくして、One to Oneマーケティングの限界のようなものを感じ始めたのです。つまり、このような丁寧な顧客応対を行っていると、一日の対応件数が3軒で手一杯となります。客単価が7万円として一日21万円、営業担当2人がかりで20日就労して月あたり80万円、年商9600万円がせいぜいのビジネスとなるわけです。極めて労働集約的で、この先に何の発展もないのではないかと気がつきました。つまり人間がOne to Oneで顧客対応している限り、この問題はクリアできません。そうして私はかばん屋をさっぱりあきらめ、大学に戻りました。


マッケンジーを経て、エレファントデザインを仲間と設立

> 学生に戻られて、まじめに経済について学ばれましたか。

西山:
そうですね。多少ただの学生ではくくれない動きもありましたが。大学卒業後はマッキンゼー・アンド・カンパニーで4年経営コンサルティングに従事しました。

> マッキンゼーと申しますと、あのDeNAの南場智子社長とはご同窓ですか。

西山:
実は、私は彼女の直属の部下でした。当時、YAHOO!、AMAZON.COMなどが出始めた頃で、HTMLビューワーではMozaicが全盛だった頃です。顧客のためにアメリカに先行市場調査に行ったりして、この分野には何かがあるな、とは感じていました。特に『ユーザーコミュニティー』の形成の萌芽に大変興味をそそられました。つまりコミュニティには自己増殖的でボランタリーな経済グループが発生します。そこに集まったユーザー層は必ずある特定の嗜好を持つ集団であるわけですから、これをうまくコントロールすれば極めて生産性の高いビジネスが生まれるはずです。しかし当時コンテンツビルダー達はコミュニティーをただただ増殖させることばかりを目的にしていて、それをどうこうすることは考えていなかったようでした。「本当に増殖するだけでいいの?」と私は大いに疑問を持ちました。実はここに学生当時自分が実行していたオーダーメイドビジネスがうまく持ちこめるのではないかと考えたのです。

> それがエレファントデザインのビジネスの始まりですか。

西山:
一時は「ドラえもんを作ろう」と称して、友人たちと近未来的なロボットを感じさせるコンピューターを組み立てたりしていました。かばん屋さんを通じて考えていたのは、世の中には自分のニーズにぴったり来るものはそんなに存在しない、ということ。メーカーの思惑から提供される商品はたくさんありますが、その中から本当に自分にしっくり来るものを見つけるのは至難の技です。そこに自分たちのビジネスの可能性があるのではないかと思い、大学時代の友達を中心にエレファントデザインを立ち上げました。現在一緒に代表をやっている桝本は天才的にデザインの技術力が抜けていたメンバーで、彼がコンピューターグラフィックス(CG)を使って商品デザインを書き起こしていきました。最初は小さいアパートの押入れにパソコンが1台あるだけの状態で、CGデザインを売り込みに行きながら仲間を増やし、徐々にメーカーを説得して商品開発していこう、という地道な動きから始めました。そのときの思惑は「何か知的所有権を売るビジネスを行いたい」というものでした。最初に作ったデザインは携帯電話カバーの『PaqPaq』という商品で、このCGをA4の紙にプリントアウトしたチラシを日曜に渋谷のキャットストリートで自分たちと同じモノを好みそうな若い人達に大量に配り、反応を集めました。すると、240枚配ったうちなんと60名から「これはどこで買えるのですか?」という問い合わせの電話が入ったのです。そこで「人数が集まれば販売を開始します」と答えながら、すぐに企画を雑誌に持ちこみました。この持ちこみ先がテレビアニメ「ポケット・モンスター」で有名なメディア・ファクトリーの出版していた『ラクダス』です。


インターネットを市場分析の省力化に利用

> 『ラクダス』はローソンの店頭端末『ロッピー』で取り扱っている商品を集めて掲載している雑誌ですね。

西山:
そのとおりです。メディア・ファクトリーはリクルートの100%子会社で、『ロッピー』で取り扱う商品を増やす命題があったようです。まさに『ロッピー』のコンセプトは「欲しいものが手に入って当たり前。手元にないものが手に入って当たり前。世の中にないものが手に入って当たり前。」というもので、エレファントデザインのビジネス目的とビッタリ合いました。早速「空想家電」はまずこの雑誌の連載コーナーとなり、そこで商品デザインとお客様の声を掲載しつつ商品改良を重ねていきました。雑誌の巻末にはがきとFAX用紙がついていまして、これをお送り頂くことで毎月お客様の声を集める方法を取りました。これらの回答は手作業でEXCELに入力し、いろんなファクター(要素)でクロス集計をかけ何度も何度も分析しました。毎月作るレポートは200ページもの厚みのものです。読者層分析、欲しい商品のイメージ、真剣度、どういう嗜好があるのか、ポテンシャル(潜在力)指数など、可能な限りの市場分析に関するノウハウをこのときに集めました。そして相関関数の高いものをターゲットに絞込んだ結果、『ラクダス』の読者像として男子高校生が浮かび上がり、このターゲットユーザー向けに生まれた商品がミリタリー調の携帯電話カバー『Pq-1』です。

> 『空想家電』をインターネット上に持ちこんだ理由は何でしょう?

西山:
お客様からの回答を集計する作業を紙ベースでやっていては裏方が大変過ぎるのです。また雑誌で販売を告知したら電話であっという間に売り切れ、入手ができない人が続出しました。紙ベースではどうしても情報が遅れ、販売コントロールを行いにくいのです。また集めた顧客の人数に応じて価格をスライドさせる方式をぜひ導入したいという気持ちがありました。データ入力を省力化しリアルタイムに価格を変動させ反応を見るためにも、インターネットを利用した情報収集はベストのものでした。『ラクダス』のユーザー層とインターネットのユーザー層がかなり一致していましたし、インターネットの普及のタイミングともぴったり合ったと思います。

> 御社にとって、Webフォームにより情報収集部分を自動化することだけでなく、データを定量分析するところがポイントになるわけですか。

西山:
その通りです。すでにある程度のユーザー動向の分析について手法を確立していて、現在、通産省からの助成金を利用して、ユーザープロフィール分析などインターネットとの連動部分をシステム化しているところです。具体的には「ネットパーセプションズ」や「アドバポッド」(シルバーエッグテクノロジー社)のようなエンジンを利用したものです。このあたりのビジネスモデルについてはすでに日本をはじめ全世界で申請済みで、これが無事登録されれば世界初のビジネスモデルとなる予定です。

> 初めての本格的な日本発世界規模インターネットビジネスモデルが生まれる、ということですね。

西山:
そうです。このビジネスモデル特許申請に関しては、通産省のある方から直々にアドバイスされました。私達が取り扱う商品自体が知的所有権の塊で、今後のためにもビジネスモデルについて知的武装をするべきだよ、と言われました。そして進んで特許情報についてリサーチするアルバイトを与えてくださって、そこで大いに勉強させていただきました。特許とは『自分のアクティビティを如何にして守るか?』ということで、極めてアメリカ的な発想であり、日本人には非常に弱い考え方です。私は半分日本人ではないですから、非常に割り切って取り組むことができました。


『ユーザー・エージェント』という新しい役割を担う

> 商品開発において、エレファントデザインの位置付けを一言で述べると何ですか?

西山:
ずばり『ユーザー・エージェント』としての役割を果たすことだと思います。つまり、エレファントデザインがプロデューサーとなり、潜在的マーケットの存在を証明だてつつメーカーにデザインという形でユーザーの嗜好を橋渡しするのです。従来消費品はメーカーからユーザーに一方的に提供する単方向の流れしかありませんでしたが、エレファントデザインのスキームを使えば、逆にユーザーの需要から発生する商品開発が可能になります。

> それでは、御社自体がメーカーになる動きにつながりませんか?

西山:
いえ。私達はあくまでも橋渡し役になります。デザインも含めたユーザーの嗜好を知的所有物としてメーカーに引き渡す役目に徹します。メーカーをやるためには強力なインフラと先行投資が必要です。本来メーカーの構造から言えば、小規模なマーケットに適合した商品を生産することはそのインフラの規模に比べてあまりに効率が悪いことなのです。ですからマスマーケットに向けた商品を開発せざるを得ないし、本当にマーケットの存在することを確信できるまではとてもリスキーで生産にかかることができません。私達はこの『リスク』を軽減するために、メーカーを説得する材料をインターネット上で取りまとめる役割を果たそうとしています。つまり、仲間を集める=同じ『フレーバー』の人間達を集め、そしてここに的確な提案を投げかけます。これを既存のメディアで行うことはあまりに大変な作業だったのです。

> ユーザーを集合させ購入につなげるモデルにアメリカの『Accompany.com』などがありますね。日本でも生活協同組合などが同じモデルにあたると思うのですが、「空想家電」と彼らとの違いは何ですか?

西山:
彼らのパラメータにはユーザーを集めることで単価を下げることしか存在していません。つまり生産ロットを増やすことにより一つ一つの単価を下げることはできますが、商品に付加されるバリュー(価値)は高まることなく、決して粗利が増えることはありません。確かに市場は大きいでしょうが、私達には興味がないことです。「空想家電」では、単にユーザーを集めるだけではなく、そこで商品にユーザーの嗜好に裏打ちされた付加価値をつけることで、同時に単価を高める方向にも向かっています。ものの値段は下げればいいというものではないでしょう。そこには必ず『適性価格』『適性ロット』という考え方が存在していて、例えば、50万円もするけれど5脚しか生産されない椅子がある場合、オリジナリティを判断すれば、実にリーズナブルと言えるはずです。そのものの価値はユーザーが決めるものなのですから。
ただ最近私達と同じようなビジネスをWeb上で展開している企業などがでてきましたが、ある意味、私達が最初にはじめた事業にポテンシャルがあったということを実感できて、反対に励みになっているのです。

> このようなビジネスが果たして日本で定着するでしょうか。

西山:
どちらかといえば、日本より欧米の方が合っていると思います。私は以前デンマークを訪れて衝撃を受けたことがあります。北欧では子供が少なく、持ち家があって当然、生活にゆとりが出てきてあらゆる耐久消費財を持っているのが当然になってくると、電化製品や家具などもスペックではなくデザインや材質などの方にこだわって選ぶようになります。日本でも少子化が始まっていますから、必ずこれら北欧の傾向を追うことになるでしょう。ここに私達のビジネスの狙い目があります。もちろん私達は全てのマーケットに通じているわけではなく、どうしても門外漢となる分野が出てきます。そういう場合には、私達の持つシステムをインフラとしてご提供すればいい、と割り切っています。とにかく今はシステムを確立することだと思っています。「空想家電」での取組みが私達のアイディアの普遍化への過程なのです。

(2000年2月取材)

投稿者 youko : 2009年10月02日 17:26

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