2010年07月23日
『Bluetooth』日本を「世界の孤児化」から救った男
通信技術本部
ワイヤレス・コンピテンシ・センター
シニアエンジニア
遠藤 千里(Chisato Endo)
インテル株式会社の遠藤千里(ちさと)氏は、日本の『ブルートゥース』担当者として、当初から世界の『ブルートゥース』関与者達と積極的な討論を戦わせてきた重要人物である。日本は何かと法的に特殊な国で、海外標準と外れた規格が結局まかり通ってしまいがちであることは周知の事実。『ブルートゥース』のような全世界同一規格を立ち上げるとき、果たして日本はきれいに足並みを揃えることができるのか? 大丈夫。実は遠藤氏の苦労があってこそ、日本はこの世界標準規格の恩恵を供することができるのである。『ブルートゥース』に汗だくで携わる遠藤氏の苦労を追う。
遠藤 『ブルートゥース』は、今まで有線で行っていた周辺機器接続を無線で代替しよう、という発想で作られた規格です。『ブルートゥース』自体が従来のケーブルの差込口と接続ケーブルに置き換わるのだと考えて下さい。基本的にUSBケーブルでつながる機器なら将来的に『ブルートゥース』を使って全て接続できる見込みです。さすがに電源供給用のケーブルは無くすことはできせんが、それ以外のケーブルは一掃することができるでしょう。例えば新幹線の中からメールチェックを行いたいとき、ノート型パソコンとつないだ携帯電話端末の置き場に困り、狭い新幹線の座席で格闘した経験はありませんか? 『ブルートゥース』なら、あのうっとおしさを解消することができます。ノート型パソコンを取り出し、メール受信操作をするだけで、胸ポケットやかばんに入れた携帯電話端末を通じてメールチェックを行うことができるのです。
遠藤 機器同士の無線接続は赤外線通信で可能ですが、赤外線には直進性があり通信する機器同士がかなり厳密に対面していないと通信することが難しいのです。『ブルートゥース』なら10m以内であれば多少障害物があっても通信できます。例えばかばんの中に入れっぱなしのパソコンと通信を行ったり、少し離れた場所にあるプリンタで印刷を行ったり、というようなことが簡単になります。その他にも、デジタルカメラとパソコンの接続、ヘッドフォンとポータブル音楽プレーヤーの接続……など、いろいろな場面で有線での接続が不要となります。
遠藤 『ブルートゥース』のチップ全体の原価はまだ少々高いですが、これが1チップ化され大量生産によって数ドルまでに下がれば、おそらくゲーム機のような低価格の商品にも搭載されるようになるでしょう。
遠藤 『ブルートゥース』は10世紀頃デンマークとスカンジナビア半島を統一したと言われるバイキング王の英語表記名です。『ブルートゥース』プロジェクトの当初からの参加者にエリクソン(スウェーデン)とノキア(フィンランド)という北欧勢がいたことと、彼ら携帯電話端末メーカーと他のパソコン関連機器をつなぐ、という意味をこめてつけられた名前です。
遠藤 もともと『ブルートゥース』のアイディアは、エリクソンとノキアという2つの携帯電話端末メーカーから生まれたものです。当時音声中心だった携帯電話端末は、将来的にはW-CDMAのように広帯域の通信に中心が移ることがわかっていました。次世代の携帯電話では、音声の通話だけでなく、広大な帯域を活用して、より高度なデータ通信を実現しようと、多くの人が考えていたからです。そこで携帯電話端末とパソコンなど他の機器を簡便につなぐ方法が必要となりました。しかし有線では利便性に限界があります。だから『ブルートゥース』の開発が望まれたのです。
遠藤 当初、エリクソン、ノキア、インテル、IBM、東芝の5社で設立された『ブルートゥース』のプロジェクトですが、Webサイト(http://www.bluetooth.com/)を見ていただければわかります通り、4月初めの段階で1,667社が参加するまでになっています。プロジェクトの団体は『シグ』(SIG = Special Interest Group)と呼ばれ、当初の5社にスリーコム、ルーセント・テクノロジー、マイクロソフト、モトローラを加えた計9社が『プロモーター』として中心的役割を果たしています。団体そのものはまだ法人組織ではないので、上記のサイトの所有者は、今は暫定的にエリクソンとなっています。
インテルは、マイクロプロセッサを含めた次世代コンピュータのプラットフォームを提案し、ソリューションを提供していくメーカーとして、彼ら携帯電話端末メーカーと他のハード機器メーカーを橋渡しする重要な位置にいます。そういう意味ではインテル自体が『ブルートゥース』そのものと言えるかもしれないですね。
遠藤 技術そのものは『シグ』との契約のもとでロイアリティーフリーで利用できます。従って、『ブルートゥース』の技術を自社の製品に利用したい企業は、必ず『シグ』のメンバーにならなければなりません。この手続きは上記サイトから担当者へコンタクトすることで進めることができます。ただし、プロモーターの9社のどこかが『ホスト・カンパニー(後見人)』となることが必要で、プロモーターの推薦という形をとることになります。
遠藤 私はもともと無線についての研究をある企業で7年ほどやっていたのですが、業務用途が中心だった無線通信をぜひコンシューマー(消費者)に広めたいという思いが強くなって、3年前に『ホームネットワーク』というコンセプトでワイヤレスLANの普及に力を入れようとしていたインテルに入社しました。しかし、残念ながら当時はまだ一般消費者が簡単に使え、安価かつコンパクトに行える適当な技術がなかったのです。それが携帯電話とノートパソコンの普及で簡単に使える無線通信への要求が高まってきました。『ブルートゥース』のプロジェクト入りを打診されたときは「これだ!」と思い一も二もなく参加しました。1997年の夏だったと思います。
遠藤 『シグ』のとりまとめは『プログラム・マネージメント』というグループが行っており、その下に『アーキテクチャー・レビュー・ボード』『マネージメント・サービス』『マーケティング』『レギュレイトリー(法規制)』などというグループが存在します。『アーキテクチャー・レビュー・ボード』の方は、画像・音声・印刷……など細かく担当を分けて仕様を検討していきます。私の属しているのはの『レギュレイトリー(法規制)』グループで、この中の日本担当をやっています。このグループは主に4つの担当があって、『日本』『日本以外の全世界』『航空』『セキュリティ』というふうに分かれています。これを見ればいかに日本が法的に特殊な国なのかおそらくおわかりいただけるでしょうね。
遠藤 基本的なコンタクト手段は電子メールとなりますが、週1回必ずチームごとで電話会議を持っています。決まった時間にセンターに電話すればそこでメンバーを一つの回線につないでくれて、それぞれが自由に発言できるようになっています。使用言語はもちろん英語です。残念ながら表情はわかりませんが、声を通してだけでも十分密接なコミュニケーションが図れることと、電話であれば世界のどこの場所にいても大抵通じるということもあり、こういう方法を取っています。ただし、どうしても欧米中心の時間設定になりがちなので、日本から参加する私にはかなり不利な時間になることが多いです。大部分は深夜から開始です。さすがに毎回参加するのは難しいので、適時出席することにしています。この他にも3ヶ月に一度どこかでフェイス・トゥ・フェイスのミーティングをすることになっています。このように電子メールと電話を駆使してコミュニケーションを図っています。
遠藤 『ブルートゥース』が使うことになっている2.400~2.438.5GHzの周波数帯は、実は日本国内で現在割り当てられている2.471~2.497GHzの周波数帯と一部重なりながらも多少ずれています。初めは日本国内で使用する場合だけスイッチで周波数帯を切り替えるような余地を残しておけばよいという考え方をしていたのですが、よく調べてみるとアメリカの法律に「ユーザーが、法律上使用してはならない周波数に設定することが可能な機器はアメリカ国内で販売してはならない」という決まりがあって、日本仕様への切り替えスイッチを機器につけることは許されなくなりました。モバイル機器業界から見れば日本は非常に大切な市場ですから、無視するわけには行きません。ですから、おそらく日本の法律を変えた方が他の全世界の仕様を変えるより簡単だろう、ということになったのです。1997年の秋のアトランタでの会合でしたが、「それではインテルに遠藤という男がいるから、彼なら適任」ということになり、法律を変える働きかけをする役目に指名されてしまったのです。それがそう簡単でないことはおいおいわかっていったのですが・・・。でも実はもともと理不尽なものには立ち向かいたくなる性格なので、適任だったのかもしれません。
遠藤 『ブルートゥース』という仕様について発表されたのは1998年5月のことです。その同時期、郵政省の通信に関する管轄部門でも、海外との規格の違うことについて「これではいけない」という意見が出てきたようです。1998年3月に『社団法人電波産業会(ARIB)』という国内の無線に関する標準仕様を取りまとめる団体が検討を開始しています。その動きを察知してまず彼らに働きかけ、徐々に『ブルートゥース親派』を作っていきました。当然既存の権利を主張して反発するメーカーも出てきましたが、世界の孤児になることの危機感の方が勝っていました。その点、私がインテルという既存の権利者にとって中立的な立場だったことが有利に働いたと思います。最終的には周波数に関してなんとか規制緩和することが決まりました。こうして最初の障壁は乗り越えたのですが、その他にさまざまな問題が起こりました。例えば、従来の日本の規制に従えば『ブルートゥース』では本来考えていなかった仕様が必要でした。それは、電気通信事業法施行規則の「端末設備等規則」に記載されているのですが、携帯電話など公衆電話網につなぐ機器へ内蔵する『ブルートゥース』のような無線デバイスには必ず日本特有の機能(「キャリアセンス」といいますが)を実装しなければならないという決まりがあるのです。これを遵守しようとすると、日本ローカルな『ブルートゥース』になってしまいますし、さらには、これに適合しないと『財団法人電気通信端末機器審査協会』(JATE)が認定する通信機器となりません。それで今度は、JATEと根気よく議論を行い、関連する産業界からの代表を交えた検討委員会を設置してもらいました。ここでの検討の結果、最終的に『ブルートゥース』が本来持っている機能でそれを代替しても良いという項目を盛り込み、郵政省令の条項改定を発令していただくことができました。
遠藤 普通なら、このような団体での折衝は大概メーカー同士の対立になりがちだと思うのです。その点、私の場合外資系である上に半導体メーカーとして多くのメーカーとお付き合いする第三者的立場にあったので、機器メーカーの一社が同じ動きをするよりはずっと旗振り役に適していたのでしょう。
遠藤 すでにメーカー向けの評価キットは発売されていますので、それを使って現在各メーカーで多くの製品が開発途上にあるでしょう。おそらく夏ごろにまずはエリクソンがヨーロッパを中心にヘッドセット(ヘッドフォン+マイク付きのリモート携帯管理デバイス)のような携帯電話ツールを出してくるのではないでしょうか。また来年春には、標準インターフェースとして『ブルートゥース』を搭載したW-CDMA携帯端末が出てくると思います。日本ではもしかしたらデジタルカメラや音楽プレーヤーなどで何らかの動きがあるかもしれませんね。
製品化が始まるずっと前からこれだけ多くの企業に指示され、業界のデファクトスタンダードになる規格も珍しいと思います。それはおそらくコンセプトそのものが、皆が納得して受け入れられるものだったからに違いありません。いろいろ苦労しましたが、今年はやっと最初の製品が商品化されます。もうすぐですので、楽しみにお待ち下さい。
2009年10月02日
インタビュー:空想生活=エレファントデザイン 西山浩平さん
2000年2月のインタビュー原稿を、古い古いPCのバックアップデータから復元できました。
今は「空想生活」としてはもちろん、「無印良品 モノづくりコミュニティー」の運営でも知られる、エレファントデザインの西山浩平さんを取材させていただいたときの、懐かしい原稿です。
西山さん、その後メールもご無沙汰させていただいておりますが、お元気でご活躍中ですか?
あのとき、こんな普遍的なサイトに着目し、インタビューさせていただいていた私自身を、ちょっと見なおしています。(笑)
エレガントでいて緻密なインターネットマーケッター
「空想家電」に見る『ユーザー・エージェント』ポリシー
最近特に脚光を浴びているのは、消費者主導型ECビジネスサイトであろう。アメリカでも『Accompany.com』のようにユーザーを多数集めることによってディスカウントを発生させたり、『ExpertCentral.com』のようにユーザー同士からのアドバイスを多数載せることでユーザーをショッピングに動員したりするなど、新たなビジネスチャンスを掘り起こすためにコミュニティを利用したビジネスモデルが多数ある。日本でもこの傾向が急激に現れ始めている。が、ユーザーの声収集のために積極的にインターネットを利用し、「マーケティング分析」という形で定量的に受け止め、「商品開発」という形で具体的に昇華させる力を持ったインターネット企業はまだほとんど存在しないのではないだろうか。
『空想家電』(http://www.coi.co.jp)の運営元であるエレファントデザイン株式会社は、その稀有な企業のひとつである。今までになかった商品提案を行い、ユーザーからの予約を集め、メーカーに対する価格交渉と生産交渉を代行し、できあがった商品を市場に乗せる。いわば『受注生産型ビジネスモデル』である。このサイトはまだ“知る人ぞ知る”といった存在に過ぎない。が、優雅なたたずまいのWebサイトの裏側では、実はハイ・パフォーマンスのマーケティングシステムと緻密なビジネスプランが牙を研いでいる。将来日本を担うインターネットビジネス企業となることを予感させるエレファントデザインをレポートする。
右欄:STATS
-----------
エレファントデザイン株式会社
パートナー
西山浩平
年齢:29才 独身
趣味:オペラ鑑賞。「最近ゲルギエフオペラを見に行き感激しました」
休日:なし。気づいたら会社に来ている。「ウィンドウショッピングが唯一の気晴らしかも」
学生かたわら『かばん屋さん』としてマーケティングを実践
> 『空想家電』のWebサイトに存在するものは、従来の日本のWebサイトにはあまり見当たらなかったデザインとマーケティングの融合というものではないかと思います。特にそのデザインセンスについて、日本人にないテイストを感じさせます。西山さんご自身のバックグラウンドというものはどういったものなのですか?
西山:
実は私は『帰国子女』です。19歳になるまで商社に勤めていた父親の仕事の都合で、南米・コロンビアで青春時代を過ごしました。コロンビアという土地柄はどちらかというと世界の中心からは一歩取り残された風情のあるところで、ビジネスのほとんどは家内制手工業が中心です。そんな土地でのんびり過ごしながら、私自身は彫刻家を目指していて、アメリカのロードアイランドスクールオブデザイン大学への入学も決まっていました。ところがその直前、両親がやはり日本に帰って経済を学んで欲しい、と言い出しまして、半ば強制的に東京大学経済学部に入ることになりました。
> 芸術家肌の方にいきなり経済学部の気風はつらかったでしょう。
西山:
自分の中で創作意欲のようなものを拭い去ることができず、20歳の頃、大学生をやりながらオーダーメイドの『かばん屋さん』を始めました。まず半年間日本で数軒しかないかばん屋さんで作り方の修行をし、そこで知り合った仲間と独立しました。営業手法は完全に口コミによるものだけで、主な顧客は弁護士とお金持ちの主婦たちでした。弁護士の方たちはなぜか『六法全書』『カセットテープレコーダー』そして『弁当』を持ち歩きます。これらをきちんとセットできるかばんというものが既製品では存在しませんでした。また、彼らにいたって好まれるグレイ系・茶系のスーツに合う色身のかばんもあまり多くありませんでした。それを私達が作ることができる、ということが裁判所の中で徐々に広まり、着々とお客様を獲得できました。面白いことに、このような方たちは一度かばんを作ると必ず次に別のオーダーメイドの革製品を欲しがってくれます。例えば、「この前と同じ皮で財布を作ってくれ」というご注文や「同じ形のものを別の色の皮で作ってくれ」というご注文が来るわけです。不思議なもので、2度3度とお会いすると必ずその方の好みが把握できます。考えてみれば、この頃はお金をもらってマーケティングリサーチを行っていたようなものです。
> お聞きしていると実に順調にビジネスが伸びていたようにお見受けしますが。
西山:
ところがしばらくして、One to Oneマーケティングの限界のようなものを感じ始めたのです。つまり、このような丁寧な顧客応対を行っていると、一日の対応件数が3軒で手一杯となります。客単価が7万円として一日21万円、営業担当2人がかりで20日就労して月あたり80万円、年商9600万円がせいぜいのビジネスとなるわけです。極めて労働集約的で、この先に何の発展もないのではないかと気がつきました。つまり人間がOne to Oneで顧客対応している限り、この問題はクリアできません。そうして私はかばん屋をさっぱりあきらめ、大学に戻りました。
マッケンジーを経て、エレファントデザインを仲間と設立
> 学生に戻られて、まじめに経済について学ばれましたか。
西山:
そうですね。多少ただの学生ではくくれない動きもありましたが。大学卒業後はマッキンゼー・アンド・カンパニーで4年経営コンサルティングに従事しました。
> マッキンゼーと申しますと、あのDeNAの南場智子社長とはご同窓ですか。
西山:
実は、私は彼女の直属の部下でした。当時、YAHOO!、AMAZON.COMなどが出始めた頃で、HTMLビューワーではMozaicが全盛だった頃です。顧客のためにアメリカに先行市場調査に行ったりして、この分野には何かがあるな、とは感じていました。特に『ユーザーコミュニティー』の形成の萌芽に大変興味をそそられました。つまりコミュニティには自己増殖的でボランタリーな経済グループが発生します。そこに集まったユーザー層は必ずある特定の嗜好を持つ集団であるわけですから、これをうまくコントロールすれば極めて生産性の高いビジネスが生まれるはずです。しかし当時コンテンツビルダー達はコミュニティーをただただ増殖させることばかりを目的にしていて、それをどうこうすることは考えていなかったようでした。「本当に増殖するだけでいいの?」と私は大いに疑問を持ちました。実はここに学生当時自分が実行していたオーダーメイドビジネスがうまく持ちこめるのではないかと考えたのです。
> それがエレファントデザインのビジネスの始まりですか。
西山:
一時は「ドラえもんを作ろう」と称して、友人たちと近未来的なロボットを感じさせるコンピューターを組み立てたりしていました。かばん屋さんを通じて考えていたのは、世の中には自分のニーズにぴったり来るものはそんなに存在しない、ということ。メーカーの思惑から提供される商品はたくさんありますが、その中から本当に自分にしっくり来るものを見つけるのは至難の技です。そこに自分たちのビジネスの可能性があるのではないかと思い、大学時代の友達を中心にエレファントデザインを立ち上げました。現在一緒に代表をやっている桝本は天才的にデザインの技術力が抜けていたメンバーで、彼がコンピューターグラフィックス(CG)を使って商品デザインを書き起こしていきました。最初は小さいアパートの押入れにパソコンが1台あるだけの状態で、CGデザインを売り込みに行きながら仲間を増やし、徐々にメーカーを説得して商品開発していこう、という地道な動きから始めました。そのときの思惑は「何か知的所有権を売るビジネスを行いたい」というものでした。最初に作ったデザインは携帯電話カバーの『PaqPaq』という商品で、このCGをA4の紙にプリントアウトしたチラシを日曜に渋谷のキャットストリートで自分たちと同じモノを好みそうな若い人達に大量に配り、反応を集めました。すると、240枚配ったうちなんと60名から「これはどこで買えるのですか?」という問い合わせの電話が入ったのです。そこで「人数が集まれば販売を開始します」と答えながら、すぐに企画を雑誌に持ちこみました。この持ちこみ先がテレビアニメ「ポケット・モンスター」で有名なメディア・ファクトリーの出版していた『ラクダス』です。
インターネットを市場分析の省力化に利用
> 『ラクダス』はローソンの店頭端末『ロッピー』で取り扱っている商品を集めて掲載している雑誌ですね。
西山:
そのとおりです。メディア・ファクトリーはリクルートの100%子会社で、『ロッピー』で取り扱う商品を増やす命題があったようです。まさに『ロッピー』のコンセプトは「欲しいものが手に入って当たり前。手元にないものが手に入って当たり前。世の中にないものが手に入って当たり前。」というもので、エレファントデザインのビジネス目的とビッタリ合いました。早速「空想家電」はまずこの雑誌の連載コーナーとなり、そこで商品デザインとお客様の声を掲載しつつ商品改良を重ねていきました。雑誌の巻末にはがきとFAX用紙がついていまして、これをお送り頂くことで毎月お客様の声を集める方法を取りました。これらの回答は手作業でEXCELに入力し、いろんなファクター(要素)でクロス集計をかけ何度も何度も分析しました。毎月作るレポートは200ページもの厚みのものです。読者層分析、欲しい商品のイメージ、真剣度、どういう嗜好があるのか、ポテンシャル(潜在力)指数など、可能な限りの市場分析に関するノウハウをこのときに集めました。そして相関関数の高いものをターゲットに絞込んだ結果、『ラクダス』の読者像として男子高校生が浮かび上がり、このターゲットユーザー向けに生まれた商品がミリタリー調の携帯電話カバー『Pq-1』です。
> 『空想家電』をインターネット上に持ちこんだ理由は何でしょう?
西山:
お客様からの回答を集計する作業を紙ベースでやっていては裏方が大変過ぎるのです。また雑誌で販売を告知したら電話であっという間に売り切れ、入手ができない人が続出しました。紙ベースではどうしても情報が遅れ、販売コントロールを行いにくいのです。また集めた顧客の人数に応じて価格をスライドさせる方式をぜひ導入したいという気持ちがありました。データ入力を省力化しリアルタイムに価格を変動させ反応を見るためにも、インターネットを利用した情報収集はベストのものでした。『ラクダス』のユーザー層とインターネットのユーザー層がかなり一致していましたし、インターネットの普及のタイミングともぴったり合ったと思います。
> 御社にとって、Webフォームにより情報収集部分を自動化することだけでなく、データを定量分析するところがポイントになるわけですか。
西山:
その通りです。すでにある程度のユーザー動向の分析について手法を確立していて、現在、通産省からの助成金を利用して、ユーザープロフィール分析などインターネットとの連動部分をシステム化しているところです。具体的には「ネットパーセプションズ」や「アドバポッド」(シルバーエッグテクノロジー社)のようなエンジンを利用したものです。このあたりのビジネスモデルについてはすでに日本をはじめ全世界で申請済みで、これが無事登録されれば世界初のビジネスモデルとなる予定です。
> 初めての本格的な日本発世界規模インターネットビジネスモデルが生まれる、ということですね。
西山:
そうです。このビジネスモデル特許申請に関しては、通産省のある方から直々にアドバイスされました。私達が取り扱う商品自体が知的所有権の塊で、今後のためにもビジネスモデルについて知的武装をするべきだよ、と言われました。そして進んで特許情報についてリサーチするアルバイトを与えてくださって、そこで大いに勉強させていただきました。特許とは『自分のアクティビティを如何にして守るか?』ということで、極めてアメリカ的な発想であり、日本人には非常に弱い考え方です。私は半分日本人ではないですから、非常に割り切って取り組むことができました。
『ユーザー・エージェント』という新しい役割を担う
> 商品開発において、エレファントデザインの位置付けを一言で述べると何ですか?
西山:
ずばり『ユーザー・エージェント』としての役割を果たすことだと思います。つまり、エレファントデザインがプロデューサーとなり、潜在的マーケットの存在を証明だてつつメーカーにデザインという形でユーザーの嗜好を橋渡しするのです。従来消費品はメーカーからユーザーに一方的に提供する単方向の流れしかありませんでしたが、エレファントデザインのスキームを使えば、逆にユーザーの需要から発生する商品開発が可能になります。
> それでは、御社自体がメーカーになる動きにつながりませんか?
西山:
いえ。私達はあくまでも橋渡し役になります。デザインも含めたユーザーの嗜好を知的所有物としてメーカーに引き渡す役目に徹します。メーカーをやるためには強力なインフラと先行投資が必要です。本来メーカーの構造から言えば、小規模なマーケットに適合した商品を生産することはそのインフラの規模に比べてあまりに効率が悪いことなのです。ですからマスマーケットに向けた商品を開発せざるを得ないし、本当にマーケットの存在することを確信できるまではとてもリスキーで生産にかかることができません。私達はこの『リスク』を軽減するために、メーカーを説得する材料をインターネット上で取りまとめる役割を果たそうとしています。つまり、仲間を集める=同じ『フレーバー』の人間達を集め、そしてここに的確な提案を投げかけます。これを既存のメディアで行うことはあまりに大変な作業だったのです。
> ユーザーを集合させ購入につなげるモデルにアメリカの『Accompany.com』などがありますね。日本でも生活協同組合などが同じモデルにあたると思うのですが、「空想家電」と彼らとの違いは何ですか?
西山:
彼らのパラメータにはユーザーを集めることで単価を下げることしか存在していません。つまり生産ロットを増やすことにより一つ一つの単価を下げることはできますが、商品に付加されるバリュー(価値)は高まることなく、決して粗利が増えることはありません。確かに市場は大きいでしょうが、私達には興味がないことです。「空想家電」では、単にユーザーを集めるだけではなく、そこで商品にユーザーの嗜好に裏打ちされた付加価値をつけることで、同時に単価を高める方向にも向かっています。ものの値段は下げればいいというものではないでしょう。そこには必ず『適性価格』『適性ロット』という考え方が存在していて、例えば、50万円もするけれど5脚しか生産されない椅子がある場合、オリジナリティを判断すれば、実にリーズナブルと言えるはずです。そのものの価値はユーザーが決めるものなのですから。
ただ最近私達と同じようなビジネスをWeb上で展開している企業などがでてきましたが、ある意味、私達が最初にはじめた事業にポテンシャルがあったということを実感できて、反対に励みになっているのです。
> このようなビジネスが果たして日本で定着するでしょうか。
西山:
どちらかといえば、日本より欧米の方が合っていると思います。私は以前デンマークを訪れて衝撃を受けたことがあります。北欧では子供が少なく、持ち家があって当然、生活にゆとりが出てきてあらゆる耐久消費財を持っているのが当然になってくると、電化製品や家具などもスペックではなくデザインや材質などの方にこだわって選ぶようになります。日本でも少子化が始まっていますから、必ずこれら北欧の傾向を追うことになるでしょう。ここに私達のビジネスの狙い目があります。もちろん私達は全てのマーケットに通じているわけではなく、どうしても門外漢となる分野が出てきます。そういう場合には、私達の持つシステムをインフラとしてご提供すればいい、と割り切っています。とにかく今はシステムを確立することだと思っています。「空想家電」での取組みが私達のアイディアの普遍化への過程なのです。
(2000年2月取材)
2006年04月19日
インフォテリア インタビュー記事発掘
本日、久々にエントリーするのは・・・。
2000年春にインフォテリアの平野社長をインタビューした際の原稿を、ようやく探し出してきましたので、それをエントリーします。
このインタビューは、某IT系ニュースサイトに無記名記事として掲載されたものですが、実はもうサーバから削除されてしまった貴重なものです。
私は著作権を放棄したつもりはないので、ここで某サイトには内緒で、私および私の同業者への記録目的で、テキスト原稿のまま再掲載させていただきました。
(本来はHTML化し、写真など体裁も整えたものでした)
6年前に平野さんが考えておられたことと、現在の実際のXMLの動向とあわせてお読みいただけば、面白い読み物になるかと思います。
◇◇◇◇◇◇◇◇
-----------------------------------------------------------------------------
XMLで天下を取る!あるXMLエバンジェリストの軌跡
-----------------------------------------------------------------------------
今、XML(eXtensible Markup Language)が熱い。日本で本格的なBtoB(対企業間)電子商取引が多数誕生すると思われる記念すべき『2000年』。企業間のデータ交換の手法としてXMLの存在が少しずつクローズアップされ、各企業サイトでXMLが採用されるケースが出てきている。しかしまだまだ巷には『XML』と聞いただけで眉をひそめる人が多い。その理由は「何に役に立つのかわからない」「HTMLで十分どんなことでもできる」「業界水準が煮詰まりきれてない状況で手を出すのは面倒そう」……といった理由なのだろうか。でも相手がどんなものなのか正確に見極めることなしに目をそむけることはもうやめよう。誰もが手をつけていない未開の領域に自らの足跡をくっきりと残しながら着々と歩いていくことを楽しんでいる人がここにいる。
インフォテリア株式会社 (http://www.infoteria.com/) 代表取締役 平野 洋一郎氏。『XML』の日本における『エバンジェリスト(伝道師)』とも言える存在である平野氏に、XMLの現在の実態について直撃してみた。
[STATS]:
Youichiro Hirano
平野 洋一郎
株式会社インフォテリア
代表取締役社長
年齢:36
家族:妻1
休日:インフォテリアを始めてからほとんど無い
趣味:ギター、歌うこと、緑色グッズのコレクション
-----------------------
XMLとの出会い
-----------------------
> まず、XLMに係わられることになった経緯は?
私の前職は、ロータス株式会社というパッケージソフトウェア会社のマーケティング担当でした。従来パッケージソフトウェアの世界では、使用するアプリケーションが違えばファイルフォーマットが行えなくて当然、という認識がありました。つまり、Microsoft ExcelとLotus 1-2-3のデータは違って当然、Microsoft Wordと一太郎のデータは違って当然という認識です。まったく同じ表や、文書を作ってもです。しかしこれは、コンピュータを知らない人にとっては当然のことではありません。私は、ソフトウェアの企画に携わる中で、個人的にアプリケーションを超えたデータ共有のための方法論を模索していました。これは、来るべきネットワーク時代には、全く同じ用途のソフトウェアでもデータ形式が全然違うということがデータ交換・共有に支障を来すであろうとの考えによるものです。
1994年頃、日本でもインターネットが普及しはじめてきました。HTMLによってOSやソフトウェアベンダーにに関係無く文書を作成、配布、閲覧できるようになりました。これを見て、文書以外にもHTMLと同じようにベンダーやOSに依存しないデータ形式として応用できないかと思っていたのです。
> そこにXMLはどう絡んできますか?
1996年になって、W3C(=World Wide Web Consortium:インターネット技術の標準化機関)でXMLが議論が上がったとき、私はロータスで、あるJavaベースの製品に関わっておりその関係でXMLに接しましたが、その内容を見て、XMLが長年の課題の解答にならないかと考えました。しかし、その時点では、SGMLをやってきた人達を中心にXMLの仕様を議論していたので、最終的な仕様が、あらゆる形のデータを表現するのに適合するかどうか疑問をもっていたことも確かです。しかし、1998年2月、XMLがW3Cからの『勧告』(最終仕様として確定されること)になり、北原(現インフォテリア常務取締役)とこの仕様をレビューして「これならいける」と確信を持つに至って、XMLに全てを賭けることを決意しました。1998年9月に私は北原と一緒に独立し、インフォテリア株式会社を設立しました。
(改ページ)
--------------------------------------
XMLって、なぜ必要なの?
--------------------------------------
> どうしてそんなにデータ共有化にこだわられたのでしょう?
本来、アプリケーションに依存しない形でデータを作成したり交換したりできることは、ユーザーにとって理想形です。なぜなら、普通のユーザーにはどうして自分のデータがアプリケーションに依存するのか、理解することはできません。例えば、Microsoft ExcelとLotus 1-2-3で全く同じ表を作っても全然違うデータとして保存されます。しかし、例えばビデオテープを見るときにメーカーや機種を意識するでしょうか? ユーザーにとって主役はあくまでもデータそのものなのですから、各アプリケーション製品はユーザーにアプリケーションの違いを意識させるような存在の仕方をしてはならないと思います。特に、インターネットに接続されていることが当たり前になってきて、多くの人がデータを交換し始めます。もちろん、個人だけでなく会社間も。そのときにソフトウェアが違うからといって、いちいちコンバーターや接続ソフトを作っていたのでは、とんでもなく手間とコストがかかってしまいます。
> しかし実際XMLにも、同じEC(電子商取引)関連のXMLであってもアリバの『cXML』、コマースワンの『CBL』などがあるように、複数の仕様が存在していますね。
もともとXMLはだれもが自由に拡張して使うことができる仕様です。ここで拡張というのは、使用する用語を定義することで、XMLの世界ではボキャブラリと呼びます。つまり、XMLの本質から言って複数のボキャブラリがあるのも自然といえば自然です。ただ、これがあまりにバラバラではそれぞれで話すことができなくなるので、標準化がおこなわれています。しかし、いずれのボキャブラリも、基本である、XMLの仕様を満たしているので、『XSLT』(Extensible Style Language Transformations)という技術を使って簡単に変換をすることも可能です。しばらくの間は、標準化されないものも含めて数多くのボキャブラリが存在するでしょうが、そのうちに特定用途ごと収斂(しゅうれん)していくはずです。
> 今現在、一体どれだけボキャブラリがあるのですか?
すでに数多くのボキャブラリが存在します。例えば、化学組成表現のための『CML』、数式表現のための『MathML』、地理情報システムのための『G-XML』、カー.ナビゲーションなどで使われる『POIX』、電子カルテのための『MML』、デジタル衛星放送のための『BML』、ニュース記事のための『NewsML』。これらは組み合わせて使うことも可能で、例えばデジタル衛星放送システム上でニュース記事を表現する場合などには、NewsMLで書かれたニュースのデータをBMLに変換するといった具合です。
> その仕様は、一体誰が定義しているのですか?
一括して定義を行っている組織はなく、用途ごとに誰かが定義します。アメリカなどではどこかの企業が率先して定義し、それを公開していくうちにデファクトスタンダードになっていくケースも多く存在します。結構小さいベンチャーが定義してしまうこともあります。しかし、日本の場合『××協議会』的な組織に関連各社が集まって皆で話し合って決めることが多いです。きっと日本とアメリカの文化の違いなのでしょうね。
(改ページ)
---------------------------------------------------------------
技術に強いベンチャーがもっと生まれるべき
---------------------------------------------------------------
> アメリカには、御社のようにXML専業の会社はあるのですか?
すでに10社以上あることを確認しています。日本では弊社以外知りません。実は、1998年9月時点で私の書いた事業計画書には、「おそらく1年後には競合がいくつか出ているはずである。その中でトップシェアを目指す」と書いたのですが、1年半以上立つ今になっても、実際に製品を持っている会社は一社も目にしません……。これが私には非常に残念に思えます。
> 御社にとって、それほどライバルは必要なものですか?
本来サービスというものは、厳しい競争の中で洗練されていくものです。競合がある中で切磋琢磨され、だめなところは淘汰されるようなことがあって、初めて業界が成立するのだと思います。
日本で競合になる会社が出てこないのは、技術系のベンチャー企業そのものの数が少ないことに起因していると考えています。確かに、最近では多数のベンチャー企業が設立されていますが、業種としては、サービス系がほとんどで技術系のところは大変少ないです。どうしてなんでしょう?日本にも優秀なエンジニアは多いのですが、きっと、そのような人達の多くはまだ大企業にいるんだと思います。実際、これまでの日本のソフトハウスは受託業務に走りがちで、優秀なエンジニアにとっては面白い領域ではなかったかもしれません。しかし、時代は大きく変わっておりベンチャー企業でも日銭を稼ぎに明け暮れずに世界に向けて大志を目指すことができる環境になってきています。是非、多くのエンジニアに起業して欲しいですね。
おそらく日本の情報産業が成長していくためには、技術面をしっかり下支えする企業が多数出てこないとだめなのだと思います。これは、ビットバレーとシリコンバレーの最大の違いだと思います。シリコンバレーには、サービス屋だけではなく数多くの技術屋もいる。いろんな規模と方向性の企業が存在して、初めてシリコンバレーのようなグループの意味と価値が生まれるのだと思うのです。
> XMLについての、世間の認識が行き渡っていないことも理由の一つではありませんか? 「何の役に立つのかわからない」というのが世間一般の評価ではないかと思います。
新しい技術ですから、まだ一般化していないのは事実です。しかし、HTMLの時も同じ状況で、最初にHTMLが出てきたときも、まさに「だから、どうなの?」という感じでしたよ。HTMLもXMLそのものが素晴らしいスーパーな仕様ではありません。みんなが使って初めて価値が出てくるものなのです。XMLだって同じです。
> 具体的にXMLを使うことによって、どういうメリットが生まれうるのですか?
ブラウザ上で見える部分だけでなく、受発注データのやりとりなど表示に関連しない部分で非常に役立ちます。つまり、XMLはページメイキングのためのものではなく、『インターネット上でデータをやり取りする上での統一形式』なのだと考えてください。HTMLはページとして表示して初めて価値がありますが、XMLは違います。
また、XMLは表現の分野においても『ワンソース、マルチパーパス』に貢献します。PCでも、PDAでも、iモードでも、それぞれのスタイルシートさえ用意しておけば、データそのものは全く同じもので表現し分けられます。HTMLのように、それぞれの機器のためのファイルを用意する必要はないのです。これを実現する技術は、前にも触れたXSLTという技術で、インフォテリアでも『iXSLT』として製品化しています。
そして、XML形式で受け取ったデータは再利用が可能です。HTMLなら、各データはタグの間に埋没してしまって取り出すことができませんが、XMLなら各データの意味情報が生きています。だから、データ活用の幅が広がるのです。
> アプリケーション間のデータのやり取りの『通訳者』のような存在がXML、ということになりますか。
乱暴に言えばそうです。インフォテリアの目標は、データがあらゆるアプリケーション間でオープンにカジュアルにやり取りできる世界を実現することです。この場合、XML自体は、表には出てこずに縁の下の力持ちとして働きます。これが、弊社名『インフォテリア』の語源である『information』+『cafeteria』という状況です。
(改ページ)
-------------------------------------------------------------
和製XMLソフトウェアをアメリカに逆輸入
-------------------------------------------------------------
> 御社が最近リリースされた『iConnector』という商品は、『Oracle』や『SQL server』などの主要データベースのデータをXML形式で出力するためのオプションソフトという位置付けなのだと思いますが、これらの機能は本来データベースソフトウェア側で持つべきものではないのですか? なぜこのような商品を御社が出さなければならないのでしょう。
『iConnector』が実現している機能は、当然将来的にデータベース内部に包含されていくでしょう。が、現在は存在しません。これだけスピードの速い世界ですから必要なものを必要なときに提供することが重要です。それから、ユーザーは、既に使っている社内アプリケーションやデータベースをそう簡単にアップグレードできません。アップグレードによる弊害を多くの企業が経験として知っているからです。iConnectorは、現在の使用中のデータベースを使いつづけながら社外的なデータ交換を行うものです。ちなみに、Microsoft Excelもデータベース的に使われることが多いので、『iMaker』というクライアント製品を用意しています。
> 日本で今年ようやくB to B EC(対企業間電子商取引)が本格的になって、大量のデータがインターネット上でやり取りされる状況が生まれてきました。とすると多くのECサイトがXMLを採用していておかしくないと思いますが、実際に採用例はほとんど聞こえてきません。これはなぜなのでしょう?
実はXMLを採用している例はいくつも出始めていますが、ほとんどがバックエンドでの適用なので表には見えてきません。まだWebサイト自体にXMLを使用している例は稀です。この大きな理由は、多くのエンドユーザーのブラウザがXML対応になっていないことが挙げられます。XMLに対応しているのは現在『Internet Explorer 5.0』だけで、『Internet Explorer』の以前のバージョンや『Netscape Navigator』に関してはまだXML対応していません。ですから、まだWebページのサービスとしてXMLを使用しているところは少ないわけです。
また、大掛かりなECを実現できるような大企業は、システムそのものが大きいことや、既にシステムを従来の技術で作り上げていることから、一般的に新技術の採用には時間がかかります。その点、新しく興ってきているネット系ベンチャーは非常にノリがよく、XMLなど新技術の採用に積極的です。
> 『ビッダーズ』でも御社の技術を使われるという発表がありましたが。
『ビッダーズ』は個人からの出品だけでなく、ビジネスセラーと言って企業からの出品もかなり重要視されています。企業からの出品の場合は大量のデータを簡単に登録できないといけないので、その標準的な切り口としてXMLを採用するというわけです。『ビッダーズ』の企業秘密もあるので詳しくは語れませんが。
> 以前『MapFan V』などのインクリメントP株式会社を取材しましたが、そこでも御社の技術が使われていると聞いています。
MapFanで使われているのは、XMLエンジン『iPEX』です。MapFanでは、タウンページと連動した最新情報をインターネット経由でサーバーに問い合わせて表示できるようになっているのですが、この問い合わせにXMLを使っています。この処理のために、サーバー側、クライアント側それぞれにiPEXを導入していただいています。これは弊社の設立後半年経った頃に実現したもので、XMLの『マルチ・プラットフォーム』といったメリットや先見性を十分ご理解いただいた上で採用していただきました。
> 今後、御社の展開はどうなりますか?
我々が起業した頃に比べるとXMLの未来は非常に明るくなってきています。これからは、XML技術をベースとしたより具体的な用途のためのソフトウェアを開発していきます。例えば、企業間(B2B)ECのためのソフトウェアなどを投入していきます。また、あらゆるインターネット技術の本場であるアメリカの市場に向けて、弊社の製品をリリースしていきたいと考えています。そのために、この2月1日にアメリカ・ボストンにアメリカ法人を設立しました。既に米国Lotus社でLotus Notesのマーケティング担当General ManagerであったTim Browneを始め営業・マーケティングに長けているメンバーを5名採用しています。これから世界に向けて本格的に始動します。日本発の良質のソフトウェアを世界に提供できる企業、それがインフォテリアとなります。
(終わり)
投稿者 youko : 09:45 | コメント (0) | トラックバック
2005年01月17日
DeNA
本当にご無沙汰なエントリーになってしまいました。
今、非常に忙しい、というか、
ギックリ腰とか、健康的にも不安定な状態になってしまい、
少し気持ちをセーブする意味で、ゆっくりのんびり仕事しています。
キーワード広告に関する再勉強も、ちょっとお休み中。
ぼちぼち頑張ります。
本日のエントリーは、
DeNAさんの東証マザーズ上場決定記念! と申しますか。
2000年春に南場社長をインタビューした際の原稿を、懐かしく探し出してきましたので、それをエントリーします。
このインタビューは、某IT系ニュースサイトに無記名記事として掲載されたものですが、実はもうサーバから削除されてしまった貴重なものです。
私は著作権を放棄したつもりはないですし、本当にいい出来のものだったので、
記録目的で、テキスト原稿のまま再掲載させていただきます。
(本来はHTML化し、写真など体裁も整えたものでした)
当時の南場社長の熱いメッセージを拾ってありますので、「ビッダーズってどうよ?」と思っておられた方もどうぞお楽しみください。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
柔軟な企画力、丁寧なセキュリティ対策がオークションの命「ビッダーズ」
株式会社DeNA
代表取締役
南場 智子(Tomoko Namba)
今年に入り、eBayの日本進出など日本のオークション市場は一挙に戦国時代に突入。観客の購買意欲にあわせて価格を次々とダイナミックに変動させていく販売方式は、実にインターネットの双方向性を最大限に生かした手法であろう。実益とゲーム的要素を兼ね備えている点でまさに仲介サービスの王道で、今後数多くのB to C(企業対消費者取引)、B to B(企業間取引)のECにてこの手法が次々に取り入られていくことと思われる。このオークションサービスの未来を信じる人たちによって、オークション専業会社として設立されたのが株式会社DeNA(デイー・エヌ・エー)。その経営者である南場智子氏は、コロコロとよく笑う少女のような人である。人良さげでちょっと『おっちょこちょい』そうな外見と、次の瞬間同じ口から流麗に語られる経営論が実にミスマッチ。筋の通った信念と冷静な読みを生み出す頭脳が、自由闊達に動く手足と体の上に乗っていた。その発想はまるで「歩く万華鏡」のようで、周囲の者を常に驚かせる。
真に楽しめるオークションサービスを目指す「ビッダーズ」は一体他のオークションサービスとどこが違うのか? 南場氏の見解を聞く。
STATS:
家族:夫。「私と違って人格者ですよ」
休日:「最近、週1日は休むようにしています」
趣味:ダイビング。「沖縄、特に慶良間(けらま)にはよく行きます」
(改ページ)
----------------------------------------------------
全ての出品者・出品商品を目視で審査
----------------------------------------------------
> 最初に、オークション専業会社を設立された経緯をお聞かせください。
1999年1月、まだマッキンゼー・アンド・カンパニーでパートナー職についていたとき、So-netの運営者であるソニーコミュニケーションネットワーク株式会社の山本泉二社長と食事を取ったことがありました。 その席で「So-netで新しくどんなサービスを取り入れていけばよいか?」というご質問を受けて、かねてからアメリカのインターネットビジネスの状況をリサーチしていて考えるところがありましたので、「今からやるなら絶対インターネットオークションです。ぜひ御社でも取り組まれなければ」とお奨めしました。ところが、「じゃ、君自身がやれば」と逆に奨められ、正直困ってしまいました。確かにオークションは自分でも取り組んでみたいテーマだったのでしたが、その場をきっかけに思いがふつふつと燃え上がり、ついに自分が経営者として会社を作ることを決心しました。とはいえ、すぐに前職を整理できなかったので、3月の段階で会社の仲間に先に退職してもらい、私はといえば6-7月は残務処理をこなしつつ設立準備に追われ、退職と同時の8月1日から社長に就任しました。サービス開始は11月29日でしたので、本当にバタバタと進んでいきました。
> ちょうどこの2月よりアメリカでオークション市場を制覇しているeBayが日本語版を始めていますね。YAHOO!オークションの繁盛も相変わらずですし、eHammerという油断のならないサービスもあります。これらの競合に対して、ズバリ御社のサービスの差別化点はどこですか?
一言で申しますと『信頼性』です。この信頼性という言葉にはいろんな見方があると思うのですけれど、まず最重視する点は『出品者および出品物の明瞭化』です。DeNAでは、出品者を単にメールアドレスのみの登録で行うのではなく、会員カードの郵便発送を使って住所確認する作業を積み重ねています。例えば『私書箱を使っていないか?』『会社を連絡先に使用していないか?』などを丁寧に目視にて確認しています。このような面倒な作業をやっているのはおそらくDeNAだけだと思います。出品者が法人である場合さえも、『会社備品の故売目的ではないか?』という点をクリアにするために事業代表者であることを明確にしてもらっています。出品物について、アダルトものはもちろんのこと、不法なものや『グレーなもの』についてはお断りします。この『グレーなもの』という判断が非常に難しいのです。例えば先日看護婦の白衣が出品されましたが、出品者の設定価格が不要品整理の常識の範疇を逸脱したものだったので、おそらくマニア向けの意図的な販売であろうと判断し、削除させていただきました。疑わしきは全て排除、という方針で対応すればほぼ間違いはないものと思っています。毎日掲載アイテムについてこのチェック作業を行っていますが、それには、提携会社である株式会社リクルートの運営するポータルサイト「ISIZE(イサイズ)」の個人売買掲示板『じゃマール・オン・ザ・ネット』で採用されているシステムをオークション用に改定し導入させてもらっています。しかしこの審査システムはあくまでも判定者の判断の『支援』を行うツールに過ぎず、最終的には必ず目視によって審査されます。
(改ページ)
------------------------------------------------------------------
手数料こそ、良質なオークション成立の必要条件
------------------------------------------------------------------
> そのようなしんどい作業を実現するためには、膨大なコストがかかりますね。
「ビッダーズ」ではそのために出品登録料100円(出品方法によって上昇)と売買成立時の手数料6%を頂くポリシーとしています。快適なオークションを実現するために、このような丁寧なセキュリティチェックは絶対に避けられません。
犯罪に泣く人を無くす、どんな取引も安心して携われる、この最低限のことを守るためにものすごく大変な作業が必要です。例えば、3月上旬から入札者側も無料メールアドレスサービスの利用者は登録が行えないように変更しました。ただし、5月中旬以降は無料メールをご使用の方もクレジットカード番号を入力すれば登録可能となります。これは、入札者側の安心感を生むだけでなく、出品者側にも安心感を持って取引に望んでいただくために守るべきことでした。しかし毎日無料メールアドレスサービスは次々と増えており、いくらデータベースにそのドメイン名を登録していってもその瞬間に新しい未知の無料メールアドレスのドメインが登場します。それでも根気よくチェックの条件を追加していきます。
そして実は『オークションあらし』という存在の駆逐も面倒な作業の一つです。例えば先日24時間で落札者が決まる『スピードオークション』というコーナーで、全商品に¥22,222という入札が行なわれたケースがありました。これは明らかに『冷やかし』と思われる行為で、このようなことが全オークション参加者の気持ちを一気に萎えさせます。これについてももちろん目視で対応しますが、その他に落札後キャンセルを頻繁に行う人には注意を怠りなく向けていて、キャンセル3回目でオークションに本気で参加する意思がないものとみなし自動的に退会していただくルールを取っています。
> しかし、YAHOO!オークションが繁盛しているのは、手数料無料が理由ということも事実ですね。
確かにC to C(カスタマー間取引)だけのオークションであれば、手数料有料のサービスは受け入れられにくいでしょう。が、弊社の場合B to Cも非常に重要な位置付けにありますから、このポリシーが成り立ちます。と申しますのは、この出品手数料の100円という条件が、出品物の確かさを保証するチェック機能として働いているのです。100円払ってでも出品するものなのですから、おそらく確実に価値の存在する商品です。この安心感と取引成立に賭ける前向きな『やる気』が入札意欲を盛り上げ、実際どのオークションサイトより入札件数が多い、という結果になって現れています。しかし、現在C to Cについては無料キャンペーンを行っておりますので、これを機に気軽に「ビッダーズ」での出品をより多くの方にご経験いただければ、と思います。
(改ページ)
--------------------------------------------------
頑強なシステム構築と柔軟な発想力
--------------------------------------------------
> このようなハードなシステムは、どのような環境で構築されているのですか。
使用しているハードウェア、OS、ソフトウェアは、全て社外秘としています。一言申し上げると、OSやデータベースはもちろん全て動作保証者の明確な有料商品を使用しています。資本金7億2千万円のうち3分の2近くをシステムと広告宣伝費に使ってしまいました。それだけシステム管理に万全を期しているということで、プログラムは全て内製です。テレホーダイタイムの賑わいが一段落する午前3時から8時まではほぼ無人で動いていますが、その他の時間は常に取引の全ログデータが複数のモニターに次々と映し出されており、おかしな挙動のある取引がないか常に監視を行っています。夜間もシステム管理者はポケベルを持っていて、エラーが発生すれば自動で連絡が通じ、すぐに管理者がサーバールームに駆けつける段取りになっています。
多少の動作の不安定はもちろん随時発生します。しかし、全体的にレピュテーションリスクを回避することには最大限の努力を払っています。「ビッダーズは危ない」という口コミが少しでも生じれば命取りになります。そのための投資は惜しみません。
> そのような膨大なシステムへの投資と、繊細なセキュリティチェック。これではいくらあってもお金が足りませんね。
今年は絶対儲からないです。現在の読みでは、2002年から儲かることになっています。まずどんなサービスを見ても、独自のコミュニティを形成できる段階に至るまで5年はかかるものなのです。それを「ビッダーズ」は3年以内に到達するのですから、非常に効率のよいビジネスだと言えるでしょう。でもそれを可能にするために、最後に物を言うのは『人材』です。これなしではどんな緻密なビジネスプランも成り立ちえません。特に優秀なエンジニアは本当に希少です。
> 私が大変興味を持ったのは例えば『大前研一に15分間罵倒される権利』『マネックス松本大社長に15分間証券アドバイスをもらえる権利』などというユニークな発想の出品です。
御社の最大の魅力は、実はこのような意外性の高い出品の企画力にあると思うのですが。
これらは私が考えたアイディアです。ちょっと思いついたら、豊富な人脈を利用してつい気軽に「ねえ、ちょっとこんなの出品していいですか?」と承諾を取ってしまいます。例えば、非常に使用料の高いF1レーサーの胸のロゴに自分の名前を入れてもらえる権利とか、普通はなかなか手に入りにくいサイン入りのグッズとか、本来のルートではありえない商品がたくさんあります。大前研一さんの回は結局7万円で落札されましたが、これは自分でも想像以上の金額でした。大成功といえますね。現在出品しているもので『プロのサックス奏者があなたのパーティに出張して生演奏してくれる権利』というのをやっています。どうせやるなら、夢のあるものを売り買いしたいのです。見ているだけでおもしろいサイトにしたいと思っています。例えば、何か隠しコマンドがついていて、クリックすると何十回に一度は全く無意味な画像やクイズが出てくるというのもとても面白いと思いますね。ネタはいっぱい持っています。次は何をしでかしてやろう?と常に頭を巡らせていますよ。
(改ページ)
------------------------------
強い競合者、来たれ!
------------------------------
> インターネットオークションは日本のマーケットに無事定着しますか。
もちろん。オークションには経済的な合理性があります。不要品は世の中に確かに存在するのに、日本の商習慣では「よく知っている人からお金をもらいにくい」という障壁があるため、正当に取引されてこなかったのだと思います。外国では『ガレージセール』のように庭先に物品を並べて近所の人からお金をもらってしまうようなクールな関係があるのですが、日本にはそのちょっとした取引の場が存在しませんでした。インターネットオークションを通せば、そのような場合でもきちんと対価を獲得できます。今まで眠っていた市場を発掘できることを意味しているわけで、その意味でインターネットオークションには非常なポテンシャル(潜在力)があります。
> では、インターネットオークションに本来B to Cで物を販売してきた業者が参入することで、既存の流通が否定される可能性はありませんか?
それはNOです。「ビッダーズ」でのB to Cニーズの取引商品は主に、1) プレミア品、2) 在庫処分品、3) 付加価値品、の3つです。いずれも、正価の持つ価値を超えたものを生み出そうとしているか、正価を切り崩しても迅速に処分したい、という特殊な目的があり、既存の売買と一線を画します。
> 特に在庫処分品については、値段がどんどん上がる方向と逆に、どんどん下がるという方向があってもおかしくないですね。
そのとおりです。他に、定価のみの取引だけれど個数限定で早い者勝ち、というやり方もありでしょう。
> 正直にYAHOO!やeBayなど競合サービスについては、どのようにお感じになっていますか?
強いて言えば、相撲の番付表のようなものでしょうか。他のサービスは東の横綱、弊社は西の横綱、という位置付けとなり、同じ土俵上でガップリ取り組みを行えればそれでよいと思っています。それぞれのサービスごとに特色があります。例えば「YAHOO!オークション」ではちょっとアナーキーだけど膨大な品揃えの中からの選定が楽しめます。「ビッダーズ」だと、斬新で付加価値の高い商品の入札を楽しめます。このような使い分けができれば、ユーザーの選択肢が広がります。また、B to Cであれば、既存の正価取引以外の新しいチャネルが増えることにつながります。今はこのようなオークションの魅力を伝え、マーケットを育てることに専念することが必要です。強いプレイヤーがたくさん入ってくれば、パイ全体を拡大することが可能なのです。その意味で今年はまだ競争に賭ける年ではありません。来年以降が本当の勝負になりますよ。
(終わり)